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手術のこと

骨折、要手術、入院...と宣告を受け
(癌でもないのに大袈裟か)
痛みでグズグズ泣いていた私の目に
また新しい涙がどっとこみ上げてきた。

私の枕元には
オリオールと担当医、ドクトール・ミル(ミル先生)が並んで立っていた。
オリオールは私に言った。
「この先生はエルス カサルスのお客さんで
僕達もよく知っている、とても腕のいい先生だから心配するな。
今年の夏は君はヴァカンス、ジョアンが僕の新しいパティシエ
一件落着、ノープロブレム!」
そしてシェフは去っていった。
その日の夜もエルス カサルスは予約で満杯だったのだ。

病室に移された後も
1人ベッドの中でいろんなことを思い出しながら
いつまでもメソメソと泣いていた。
そういえば私のパンダはどうなったんだろう?
あの事故現場で私はマルタに聞いた。「車はどうなってる?」
そのとき彼女は「見ないほうがいい」と答えたので
それで私はもう見なかったのだ。
可哀想なパンダ、私なんかよりずーっと痛かっただろうに...

暫しの入院生活。

今まで一口も口にしたことのなかった
病院の食事。
「病院の食事は不味い」のが一般的な定説で
確かにそれは正しい。そして万国共通だ。
しかしそれ以前に
「美味しくごはんを食べられる健康状態ではない人」が食べるのだから
どんなに美味しいものを出されたって結局は不味いのだ。
なので病院の食事について批判する気は更々ない。
が、
「冷凍食品揚げました」みたいなものや
「インスタントコーヒーをミルクに溶かしたカフェオレとクラッカーのみ」の朝食などは
どうかと思う...









そして手術。

マルタが来てくれた。
彼女は私の手術中、手術後
何時間も外で待っていてくれたのだ。
この恩は一生忘れない。

ドクトール・ミルは評判の良い医者だった。
お見舞いに来てくれた人々は皆口を揃えて
「あの先生は腕がいいから大丈夫」と言った。
これは余談だが
オリオール達の従弟にも1人医者がいて
ぺップという名前の、見た目は「少しファンキーなおじさん」風
しかし「国境なき医師団」のメンバーで頻繁にアフリカに出張するような人で
ドクトール・ミルはこのぺップとも親しいのだそうだ。
そしてこのぺップは
私も仲間に入れてもらったバルサ観戦グループのメンバーでもある。

それにしても「医者」って
物凄い「修理屋」だ。

人の腕を切り開いて
骨と鉄を組み合わせて鋲で止めて
修復したらまた閉じて縫って元通りに、
なんて信じ難い作業を
現実にしかも私の体の一部で行ったのだ。

手術後のレントゲン撮影で見た
私の新しい左腕は
何やら人工的なギザギザしたものが入った
「実はロボットなんです」みたいな腕だった!
この腕、空港の手荷物検査で
あのアーチをくぐる度にピーッ!と鳴るに違いない。
写真を見たドクトール・ミルは
「ムイ、ビエン!」と満足げ
偉大なドクトール・ミル
あなたはただのおじさんじゃなかったのですね...


ハア、終わった。


手術のこと_e0083228_123827.jpg


つづく。
by tomo114t | 2006-07-10 01:26 | 療養中
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