仕事を褒められることは
当たり前に嬉しいし、何よりの励みだが さらに私にとって格別に嬉しいのは その土地の伝統菓子を上手に作って褒められたとき。 自分が「外国人」だという垣根を飛び越えたような気になるからだ。 Carquinyoli カルキニョーリという カタルーニャの伝統菓子 アーモンドの入ったビスケットのようなもので イタリア・トスカーナ地方のカントゥッチョとよく似ている。 エルス カサルスではこれを トリュフチョコレートなどと小皿にのせて コーヒーや食後酒と共にサービスしている。 大抵の菓子屋やスーパーでも売られているが うちのは自家製です! ...って私が作っているのだが。 シェフ、オリオールはいつも 「美味しいカルキニョーリを作るのは簡単じゃない」と言う。 私はいつも何の気無しにこれを作っていて 自慢じゃないが何でだかいつも上手に出来る。 気をつけているのは生地を捏ね過ぎないことくらいだ。 小麦粉、砂糖、卵、スポンジケーキの余り物などの材料を ミキシングマシンでゆっくり捏ねる。 途中で何度も機械を止めて 材料が全体に均一に混ざるように手で底の粉を掬い上げながら しばらくすると生地がまとまってくる。 まとまってきたらアーモンドをザッと入れて もうひと混ぜしたら、終わり。 太い紐状にしてオーブンへ。 20分ほど経つと厨房中にアーモンドの軽く魅惑的な香りが立ちこめる。 太い紐はさらにひとまわり太くなって、こんがりと濃いきつね色に。 さあ、今だ!鉄板を一枚ずつオーブンから出して 予め用意しておいたまな板と包丁のもとへ走る。 焼き立ての熱くて柔らかいうちに手早く切らないと 冷めてしまった後ではもう固まって切れなくなってしまうのだ。 この「カルキニョーリが焼き上がる頃」は 私にとってはかなり大切な瞬間。 オーブンとまな板の間を走って往復 可能な限り全部同じ1cm幅に切ることにも集中し この間に誰に何を頼まれようとも 「今はダメ!」カルキニョーリが最々優先だ。 切り口にアーモンドが白く姿を現わし 日本の輸入食品店でも見かけそうな顔。 冷めた頃を見計らって、端っこをかじってみると カリッ!という高音が歯から脳を突き抜ける。 ヤッタ、今日も上出来だ! 食事が終わってもテーブルから離れがたく 余韻に浸りながらお喋りに花を咲かせ つい手が伸びる... そんな場に一番相応しいのが このカルキニョーリだと私は思う。
by tomo114t
| 2006-05-08 03:23
| エルス カサルス
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