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久しぶりに


大きな失敗をした。

本当に厨房の仕事というのは
その日その時その瞬間になるまで
何が起こるか誰にも予想がつかないものだ。
時には少々苛酷な自分との戦いでもある。

土曜日の昼
大抵の週末がそうであるように
レストランの大小のテーブルのオーダーに加え
ホテルの宿泊客のメニュー(定食)のオーダーで
あっちへ走りこっちへ走りしていた。
久しぶりに_e0083228_7125255.jpg

時間のかかるポストレは
食事前に予め注文を受けるのだが
その時間のかかる一品のオーダーが入っていたのを
皿をもう出さなければいけないときになって初めて知った。
お客が後から頼んだのか
サービスの人が書き忘れたのか
私が見落としたのかは判らなかったが
とにかく時間がかかるものを急いで出さなければならず
焦って慌てて間に合わせようとしたため
「お客を待たせた上にひどいものを出す」結果となってしまった。

割れた風船のようにぺちゃんこのボラッチョ(ババのようなブリオッシュのシロップ漬け)
良い状態でないのは誰の目にも明らか
しかしシェフはやり直しを許さなかった。
「これ以上待たせるよりもこれを出して値引きしたほうがましだ」と。

ここのところずっと私の仕事は順調で
シェフからもいつも誉められていたので
久しぶりの屈辱に大ショックで
ワア−ッと大声を挙げて泣いてしまいそうになった。
しかし営業中に皆の前で泣くなんて絶対にしたくなくて
私は涙をこらえるために必死で唇を噛んでいた。
「唇を噛んで涙をこらえる」なんて
昔の歌の歌詞に出てきそうなシーンだけれど
それは本当にあるんだとこのとき実感した。
あまりにも強く噛んで唇が切れるかと思ったほどだ。

営業が終わったらパンダと一緒に森の中へ行って
誰もいないところで思いきり泣くつもりでいたが
休憩も食事もせずにひたすらトリュフチョコレートを作っていたら
それで涙の素が消えてしまった。

もう同じ過ちは二度と一生するものか。


しかしその翌日に
そんなことも吹き飛ぶ楽しい企画が待っていた。
(もう終わってしまったけれど 残念)
エルス カサルスのいつものメンバーで
バスク地方へ冬の遠足、言うまでもなく「食」目的の。

というわけで次回は
カタルーニャじゃなくて「バスクバンザイ!」な話を...
by tomo114t | 2006-03-02 07:24 | エルス カサルス
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