偉大なる日常食


賄いのところで名前が出た
「パンコントマテ」とは?
これを抜きにして
カタルーニャの食は語れない。
全カタルーニャ人が生まれてから死ぬまで
一生涯食べ続けるものだ。

「パンコントマテ」
カスティーリャ語で
pan con tomate(パンコントマテ)
カタルーニャ語で
pa amb tomaquet(耳で聞く印象ではパントマッカ。
外国語をカタカナ表記するのは実はけっこう無理がある)
「パンとトマト」という訳だが
その実体は...

大抵の場合
食卓にパン(トーストしてもしなくてもよい)
トマト、オリーブオイル、塩
が置かれてあり
パンコントマテが食べたければ
各自で作る。
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まずトマトを横半分に切り
スライスしたパンにトマトの切り口を当てて
果汁と果肉を擦り付ける。
パンにバターを塗るように
パンにトマトを「塗る」のだ。
その塗り加減には個人差があり
うっすらとピンク色程度に擦る人もいれば
トマトがボロボロになるまで絞り出して塗る人もいる。
その後オリーブオイルをたらりとかけ
塩を振って出来上がり。

そしてその使用後のトマトは
食べない。
さらに興味深いことに
使いかけのトマトはテーブルの中央へ戻され
他の人が使い回したりする。
他人が使ったものを、何て思ってしまいそうだが
食事を共にするのはいつも
家族もしくは気のおけない仲間
日本なら自家箸で大皿料理や鍋をつつくのと
同じ感覚かも知れない。

パンコントマテはいつ食べるのか?
朝昼晩を問わずに食べられている。
朝食に、昼食に
ちょっと小腹が空いたときのおやつに
パンコントマテにサラミをのせてつまんだり
これといって食べるものがないときに
パンコントマテとオムレツで簡単な夕食にしたり。
サンドイッチを作るのも
パンコントマテ状にしたパンで具をサンドする。
何がなくともパンコントマテ
こんな便利な食べ物を私は他に知らない。

エルス カサルスには
「飲むパンコントマテ」がある。
これはオリオールと彼の大親友である
ジョルディ ヴィラという
バルセロナで注目されているシェフの2人が開発したものだ。

生のトマトの皮と種を除き
果肉だけをミンチにして塩を加えたものを
スーパーバッグと呼ばれる網袋に入れて
冷蔵庫の中で一晩吊るして置く。
そこから出てくるのは
赤ではなく透き通った液体。

これをスリムなミニグラスに注ぎ
その上に良質のオリーブオイルをたらりとのせて
さらに砕いたパンの耳を浮かべる。
パン、トマト、オリーブオイル、塩と
構成要素は同じなのに見た目が全然違う。
しかしこの透明のジュースを
一気にクイッと口に入れると
豊潤なトマトのイメージが
頭の中にパーッと真っ赤に広がる。
さらに香しいオイルがネトッと舌に触り
最後にパンをかじると香ばしさと音までが加味され
まさしくこれはパンコントマテ!

この「飲むパンコントマテ」は
エルス カサルスに食事に来る全ての客に
食前の突き出しとして
グラスにラングニサ(カタルーニャのサラミ)で蓋をして
サービスされる。

何はなくとも
パンコントマテ
永遠不滅の日常食なのだ。

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by tomo114t | 2005-10-18 23:10 | 食のこと
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